by小野進一
【現役デザイナーが解説】デザイナーとしてのキャリアアップを考えると、ベンチャーへの転職は合理的かもしれない
実力主義であるベンチャー企業は、自身のスキルを磨きたいデザイナー達にとって、大変魅力的に映るのではないでしょうか。
ベンチャー企業に関するJVRデータベースを作成するジャパンベンチャーリサーチの調査によれば、2018年のベンチャー企業の資金調達額が3,800億円を超えたといいます。
また最近では、大企業がベンチャーに出資するケースも増えており、ベンチャー企業の勢いは今後ますます伸びていくでしょう。
外から見ているとベンチャー企業には特有の不安定感に不安を感じる部分もありますが、内情を知ればキャリアを積むにはとても合理的な環境でもあります。
筆者はベンチャー・中小・大手企業にてデザイナーとしてのスキルを詰み上げ、現在では独立しているデザイナーです。
この記事では、現役デザイナーである筆者が、デザイナーとしてベンチャーで働くこと、ベンチャー企業に転職することについて解説します。
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目次
今後私たちデザイナーに求められるのは「スキルチェンジ」である
近年、AI技術(人工知能)の急速な発展により、デザイン業界に静かな動揺をもたらされています。簡単なグラフィックの自動作成や、ミリ単位の自動調整が可能となったのです。
まだ広くは浸透していないものの、今後導入する企業や印刷所は増えていくでしょう。『DTP』という言葉をあまり聞かなくなったのも、このような背景があるからです。
広告代理店の専属デザイナーや印刷所の社員達などが、簡単なグラフィックをこなせるようになる時代が、すでにそこまで来ています。
デザイナーという職業から離れて考えてみても、今や終身雇用というモデルの崩壊が徐々に進んでおり、「大手」という太い柱が揺らいでいるのが現状ではないでしょうか。
そのような背景において、今後私たちデザイナーに求められることは「スキルアップ」というよりも「スキルチェンジ」です。
紙媒体の急速なデジタル化、新たなWebサービスの急増、単純作業のAI化など、ひと昔前のスキルが役に立たなくなり、必要・不必要なスキルを見極める目が重要になってくるのです。
ではそのようなスキル・経験を合理的に積むならどうすればいいのでしょうか?結論からお話すれば、ベンチャー企業への転職が良いのではないかと思います。
大手とベンチャー、キャリアアップを考えるならどちらが良いか?
デザイナーとしてのキャリアアップを考えた場合、その道は大きく分けて2つあります。
- 大手・中小企業で経験を積む方法
- ベンチャーで一気に経験を積む方法
この2つです。どちらが「正しい」かというと一概には言えません。
なぜかというと、会社の環境などに依存する要素が多いからです。ただ、合理的な観点から言えば、ベンチャーで経験を積むほうが良いでしょう。
ベンチャー企業特有のスピード感は、スキル・精神面・闘争心など、あらゆる部分で大きく成長する可能性がありますし、「学び続ける意志」を保ち続けられるなら、短期間での大きなスキルアップも夢ではありません、しかし、そのようなメリットの影に隠れるように、デメリットも数多く存在します。
ベンチャー企業向けのデザイナーとは?
それでは、ベンチャー企業に向いているデザイナーとは、どんな資質を持っている人でしょうか?それは、
- いま必要なことを臨機応変に考えられる人
- 必要のないことを切り捨てられる目を持つ人
- 変化のスピードに耐えられる人
です。順番に解説していきます。
(1)いま必要なことを臨機応変に考えられる人
大手・中小企業では、会社の規模が大きければ大きいほど、規範が存在しないと組織としてのまとまりが薄くなります。
ですので、大手になるとルールや規範に束縛されてしまう傾向にあるのです。 対して、ベンチャー企業の大きな特徴として間違いなく言えるのは「自由度」でしょう。
ベンチャー企業では、ルールや規範がない状態の中働いていく必要があり、臨機応変に対応し、自身で考え、行動することが必要となってきます。
デザインのスキルを手取り足取り教えてくれるような上司や先輩もいないので、実務から積極的に「学んでいく姿勢」が大事です。
スタートアップデザイナーとしてベンチャーに就職した知人によれば、あまりに価値観が広がりすぎた結果、自身のビジョンが見えなくなってしまったことがあったそうです。
入社当初、会社の規模が小さく、駆け出しの段階であったので、企画からリソース管理、営業からライティングに至るまで、デザインに関すること以外の業務も行なっていたそうです。
一見すると「学びが多い職場」のように思えますが、本人はむしろ逆で、「今の自分に何が必要か教えてくれる人がいない」ことが大きなストレスだったそうです。
熱量のある社員や、常に新しいことに挑戦し続ける環境には刺激を貰ったそうですが、と同時に自分にとって必要なことを見極めることが難しくもなったのだとか。
このような「高すぎる自由度」に不安を覚える人は、教育制度などがしっかりと整っている大手に行くのが良いかもしれません(※大手=教育制度が整っているではありません)。
(2)必要のないことを切り捨てられる目を持つ人
駆け出しのデザイナーは、ビジュアルにフォーカスしてしまいがちです。
PinterestやBehanceなどの作品投稿サイトに集まる、美しいロゴタイプやUIなどに影響されてデザイナーを志した人も多いでしょう。
筆者もその一人で、大きな会社に勤めていた頃は、寝る間も削ってミリ単位の調整に夜通し時間を割いていました。
しかし、個人のデザイナーとして外からベンチャー企業に関わるようになって気づいたのは、圧倒的な「スピード感」でした。
リリースが間近に迫った案件で、ミリ単位の調整を延々と繰り返すのは、正直自己満足でしかないと悟ったのです。
また、納期を引き伸ばし、コストをただ引き上げている行為だとも考えるようになりました。 もちろん、1px単位の字間・行間の調整などの試行錯誤が無駄とは言いません。
しかし、何が必要で、何が不必要かを見極める能力が、常に成果を求めるベンチャー企業に勤めるデザイナーには必要不可欠です。
逆に言えば、フォントの選別、グラフィックに対する作業にこだわりを持ちたい人は、吟味する余裕のある大手・中小企業などに行くのが良いでしょう。
デザインの知識も腰を据えて学ぶことができます。
(3)変化のスピードに耐えられる人
ベンチャー企業とパートナーとして仕事をするようになってもう1つ驚いたことは、テコ入れがとても早いことでした。
例えば、関わっていたWebサービスのコーディングに対して、段階的に短期的な修正を数多く入れるなどです。
PDCAを高速で回しているので、事業がうまくいかないと修正を入れるタイミングが早くなります。
必要に応じて朝令暮改も大いにあります。いずれにしても、ベンチャーは大手に比べて経営体力が高くないので、あまり長期的な視点で対処するようなことはありません。
デザイナーがキャリアアップを考える時に大切なマインド
あわせて、デザイナーとしてのキャリアアップを考える時の大切なマインドの話についてもご紹介します。
結論から言うと「市場価値の高い人材」を目指すことが大事です。つまり、あなたが会社を選べる人材になることが、キャリアアップにおいて重要です。
こうした考えをもつためのコツもあわせてご紹介しましょう。
【コツ1】企業の独自言語に染まるのはNG
これは大企業に多いですが、企業独自の入稿データ処理や、Web言語を使っていたりします。
筆者も経験済みですが、ある会社での入稿データの作成の仕方が、独自すぎるやり方で、他の印刷所に通用しなかったことがありました。
これは、その企業が長年付き合いのあった印刷所と共に編み出した方法だったのです。 そのような独自言語の存在を否定はしませんが、自身のキャリアアップを考えるなら話は別です。
例えば転職した先でそのスキルが全く役に立たないのなら、まずいですよね。別の会社へ転職しても通用するスキルを身につけたほうが、長い目で見ると安全でしょう。
【コツ2】風通しの良い職場を見極める
ベンチャーの話で言うと、新規Webサービス系の企業の多くは、社員が情報発信をしています。
実はこれかなり重要で、というのも社長や社員が積極的に情報を発信する企業は、風通しの良い環境であることが多いからです。
また、そのような職場には、優秀な人材が多く集まる傾向にあります。
そうした環境であれば、閉鎖的にならず、マクロとミクロの視点の双方を持ちつつ、自分より優秀な人材に囲まれて働くことができるでしょう。
まとめ:デザイナーのキャリアアップにはベンチャー転職が合理的
繰り返しになりますが、デザイナーとしてのキャリアアップにおいて大切なのは、「市場価値の高い人材」を目指すことです。
そう考えてみると、大手とベンチャーでは制作フローの違いはあれど、ダイレクトユーザーと向き合える環境が揃っているベンチャー企業では、学ぶことや刺激になることが多いのではないかと思います。
とはいえ、これはあくまでもキャリアアップに対する合理性のお話。働く環境として考えたときには当然相性やカルチャーフィットの面もあります。
各社の働き方や社員の雰囲気など、転職エージェントのコンサルタントは何度も色々な企業を訪れて具体的なことも把握していますので、気になる企業がある方や色々な企業を紹介して欲しいなどのご希望があれば、いつでもお気軽にご相談ください。
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