by小野進一
広告代理店の営業職が他業界と共通する点・異なる点
広告業界の代表的な会社と言えば、広告代理店です。その業態は、主にメディアの広告枠を仲介してクライアントに販売することで、手数料(マージン)を得るビジネスモデルです。
さらに広告代理店には、総合広告代理店、專門広告代理店(とりわけインターネット広告代理店)、ハウスエージェンシーの3つの種別に分かれていて、それぞれにその役目・役割に違いがあります。
では、他の業界と同じく広告業界でも花形に位置する「営業職(アカウントプランナー)」の役割は、どのように変わってくるのでしょうか?
ここでは、広告代理店3種類の概要を確認しつつ、広告業界の営業職の特徴と他業界との共通点をくわしく解説します。
目次
そもそも広告代理店の営業職とは?
広告代理店、広告業界の営業職は、よく「アカウントプランナー」(通称アカプラ)と呼ばれています。
※ここでの「アカウント」の意味:
意思決定が行われて完結することができる顧客ビジネスの単位で、「顧客」や「取引先」よりもずっと広い意味で使われています。
アカウントプランナーとは、広告に関する企画営業を行う仕事で、物やサービスを販売し契約する営業とは少し異なり、「顧客の打ち出すニーズに合わせて最適な広告を提案し、顧客の収益アップに繋げる役割」を担います。
具体的には、広告の「制作」「運用」「コンサルティング」などの業務を行いますが、主体的業務は広告の出稿計画をプランニングすることです。
3種類の広告代理店
広告代理店とひとくちに言っても、大きく分けて3種類に分かれています。
- 総合広告代理店
- 専門広告代理店
- ハウスエージェンシー
それぞれの代理店によって「営業」の対象や、取り扱う内容も変わってきますので、特徴を確認しておきましょう。
総合広告代理店
総合広告代理店とは、顧客からマーケティング活動の委託を受けて、さまざまなメディアの広告枠を総合して扱い、消費者と顧客の橋渡しをする役割を果たしている企業のことを指します。
さまざまな広告メディアを扱っているため、顧客の希望に合わせて複数のメディアを駆使して、大掛かりなキャンペーン展開やプロモーションを手掛けることもできます。
そうした実績が豊富なことから、過去の事例を元に顧客へ最適な広告プランニングの提案を強みとしているのも特徴です。
- 代表的な企業:電通、博報堂
専門広告代理店(とりわけインターネット広告代理店)
専門広告代理店は、総合広告代理店とは違い、ひとつの専門メディアに特化した営業活動を行っています。
具体的には、新聞・雑誌の広告枠を専門的に扱う広告代理店、屋外広告を専門に扱う広告代理店、インターネット広告枠を専門に扱う広告代理店などがあります。
各メディアの特徴を熟知しており、専門的なノウハウを駆使し理想的な費用対効果を出すことに強みを持っています。
特に、昨今はインターネット環境の充実とスマートフォンの普及により、バナー広告や動画広告、メール広告などを扱うインターネット広告代理店の市場規模が急成長しています。
- 旧来媒体系の代表的な企業:日本経済社、読売IS、アイアンドエフ など
-
インターネット広告の代表的な企業:サイバーエージェント、D.A.コンソーシアムデジタルホールディングス、アドウェイズ など
ハウスエージェンシー
ハウスエージェンシーとは、メインの株主である特定企業(親会社)や特定グループの広告を専門的、かつ独占的に担当する広告会社のことを指します。
大企業の広告宣伝部が独立分社化しているケースが多いため、基本的には特定の事業会社からの案件のみを扱いますが、中には他社の案件も引き受け、総合広告代理店のような機能を持つ代理店もあります。
実は、日本の広告代理店はその多くがハウスエージェンシーで、かなりの割合をハウスエージェンシーが占めています。
- 代表的な企業:ジェイアール東日本企画、東急エージェンシー、NTTアド、
デルフィス(トヨタ自動車) フロンテッジ(ソニー) など
【ハウスエージェンシー】を徹底解説! 総合広告代理店との違い
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広告業界の営業職が他業界と共通する点
広告代理店の営業の仕事内容としては、他の業界の営業の仕事内容と共通する部分と異なる部分があります。
◆他業界との共通点
共通する仕事内容としては、クライアントの窓口になって問題点や課題をヒアリングして、どのような広告展開(プロモーション)をすれば、課題解決に結びつけることができるかをクライアントに提案するという点です。
プロモーションを企画通り行い広告効果の成果を出すためには、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、WEB、SNSなど、あらゆるメディアの特性を熟知し、どのようなアプローチをしていくかの知識と経験が必要となります。
そして、その知識と経験を活かしてプランニングを行い、広告手法や制作物の予算管理を行いながら、実際の計画に沿ってプロジェクトを遂行していきます。
実行するにあたり、営業担当はマーケティングやクリエイティブのスタッフ、媒体担当など社内外の色々なプロジェクトに関わる人をまとめる調整役も担います。
ここまでは、多少扱うものは違っても、他業界の営業の仕事とほぼ似たような内容と言えるでしょう。
広告業界の営業職が他業界とは異なる点
では、他業界の営業職と異なるポイントは何でしょうか?大きく分けて3つご紹介します。
クリエイティブに関わる
通常の営業と異なる仕事内容としては、テレビ・ラジオのCMやポスター、フライヤー、販促POPの制作に関わることができるといったクリエイティブな側面が、広告の営業職にはあります。
自分自身が、広告の制作に少しでも携わることができるところが、モノやサービスを直接販売する通常の営業とは大きく異なっている点です。
平均年収が高い
民間企業のサラリーマンの平均年収は、約443万円(令和2年国税庁調べ)、広告代理店の平均年収は、広告代理店を含む学術研究、専門・技術サービス業でみていきますと、平均年収は約554万円(令和2年国税庁調べ)です。
広告業界のトップ企業ともなると、平均年収は1000万円以上(電通1273万円、博報堂DYホールディングス1089万円)、インターネット広告のサイバーエージェントは709万円です。
これらのことからも、広告代理店の営業職の給与は、相当高い金額が期待できるといえるでしょう。
高収入を得る可能性がある広告代理店は、就職活動や転職活動をしている人たちにとってとても高い人気を誇っています。高収入の可能性の中には、広告代理店の営業職には各種手当てやインセンティブ制度などがあるからです。
応募するために求められる条件
さらに、広告業界の営業の求人に応募するには条件があります。ほとんどの場合は四年制大学卒業であることが前提になり、また30代以上ですと法人営業の経験や同業界での就業経験が求められることが多くなっています。
特別な資格は必要ありませんが、広告出稿のメリットをクライアントに、わかりやすく説明する提案力、論理的思考能力、要望を正確に汲み取って希望どおりの広告出稿をするために、社内外の調整をする役目も担いますので、高いコミュニケーション力が求められます。併せて、広告出稿のスケジュール管理、それに関わる多数のスタッフの管理能力も必須となります。
ちなみに、よく誤解されることですが、英語の知識は基本的には必須ではありません。日本国内を中心に活動している広告代理店なら、クライアントは国内企業なので英語を使用する機会はほとんどありません。
中途採用の場合、基本的に未経験からの挑戦は難しい
広告代理店の営業職への挑戦は、基本的に中途採用の場合、まったく未経験だと難しい場合が多いのが現実です。特に、20代後半から30代前半だとある程度の実務経験が必要になります。
その一方で、25歳以下の第二新卒の場合には、未経験での採用を積極的に行っている企業も多く、未経験でもポテンシャルが高ければ伸びしろを評価する傾向にあります。
ただし、以上はあくまでも正社員の採用の場合に限ります。契約社員や派遣社員などの場合には、30代であっても営業職として採用されることもあります。
大手の広告代理店の場合、未経験の人が最初から営業職を担当するのはレアケースですが、営業アシスタントとしてある程度経験を積んでから、晴れて営業職として活動できるようになるケースもあります。
専門的なスキルや知識を用いるコピーライターやデザイナーなど、クリエイティブ系の職種になると、未経験から挑戦するのはほぼ不可能と言っても過言ではありません。
その点、営業職は他の職種よりも門戸が開かれていますので、給料アップなどのビッグチャンスをつかみたい人には強くおすすめしたい職種です。
近年はテレビ、ラジオ、新聞、雑誌などの媒体からインターネット広告への予算がどんどん増加しています。そのため、インターネット広告会社は積極的に人材を採用しているため、広告業界の営業職に就きたい方は、こうした企業が狙い目です。転職活動をするなら、<自分は将来的にどのようになりたいのか?>を明確にしてから活動しましょう。
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