全体は安定と主張も…浮き彫りになる業種差
ニュースサイトに直撃、クリック率は半減
米Googleが検索結果にAI要約機能「AI Overview」を導入して以降、世界各地でアクセス減少の報告が相次いでいる。米Business Insiderによると、HuffPostやWashington Postは前年比で約50％減。英The Guardianでは検索トラフィックが最大79％減少したケースもあった。
米調査機関Pew Researchによると、AI要約が表示された検索で外部リンクがクリックされる割合は8％にとどまり、要約がない場合（15％）と比べて半減。要約内リンクのクリック率はわずか1％だった。
速報性の高いニュースやトレンド記事では、要約で読者が満足し、リンク先に進まない傾向が強まっている。
Googleは「全体は安定」と反論
一方、Googleは公式ブログで「オーガニッククリック数は前年と比較して安定している」と反論する。さらに「リンク先での滞在時間が長く、質の高いクリックが増えている」と強調する。
Google側は、AIが単なる情報の置き換えではなく「複雑な検索の入口」として機能していると説明。ただし、この統計は全体平均に基づくため、特定ジャンルでの急減は平均化され、数字上見えにくくなっている可能性がある。
浮き彫りになる業種間格差
アクセス減少の影響は業種ごとに差がある。ニュースやQ&A型のサイトは打撃が大きく、対して専門的かつ深掘り型のコンテンツを持つサイトは比較的安定している。
また、ユーザー行動も二極化が進む。簡単な質問はAI要約で完結する一方、詳細な情報収集ではリンク先が重視される。さらに、FAQ形式や箇条書きなど構造化された記事はAIに引用されやすく、そこからの誘導流入が期待できる。
AI時代の生き残り戦略
SEO対策だけでは不十分になりつつある。今後はAIに適応した情報発信戦略が鍵となる。
- コンテンツの構造化
MarkdownやFAQ形式を取り入れ、AIが正確に情報を抽出できる形に整備。 - 直接的な読者接点の強化
メルマガやSNS、ポッドキャストなど、検索に依存しないチャネルを確保。 - 複数プラットフォーム対応
ChatGPTやPerplexityなど、Google以外のAI検索にも対応。 - 独自性の高いコンテンツ制作
現場取材、分析、インタビューなど、AIが再現しにくい情報価値を提供。
価値ある訪問をどう増やすか
AI要約導入の影響は「減った」と「減らない」の両面が存在し、真実は業種・サイト構造によって異なる。
これからの競争軸は単純なアクセス数ではなく、「価値ある訪問」と「継続的な読者関係」をいかに築くかに移っていく。
AI時代の波を乗りこなすには、変化を受け入れ、戦略的に進化する姿勢が求められる。
