by小野進一
PR業界を徹底解説!広告とPRは何が違う?
近年「企業(商品(製品)/サービス)が世の中と握手するための仕事」ともいわれるPR業界のお仕事。
以前は、テレビや雑誌にクライアントに有益な情報を記事として掲載してもらい「流行をつくり出す仕事」とも言われていましたが、現在は業務領域はより上流になってきていると言われています。
そのような状況でも「PRと広告は、何が違うの?本当のところよく分からない」という声がまだまだ多いのも現実です。 そこで本記事では、PR業界について徹底解説します。
※現在、PR業界を含む各広告代理店は即戦力はもちろん未経験者でも、積極的に採用する方針を取っています。
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目次
そもそもPRとは?
PRとは、Public Relationsの略でパブリックリレーションズと読み、直訳すると「公的な関係」。
本来の意味は企業、行政、学校、NPOなどの組織が、ステークホルダー(組織となんらかの利害関係がある人々)との間に「相互に利益をもたらす関係と信頼を築き、さらにそれらが保たれるように適切にマネジメントする」ことです。
企業以外の組織においても行われている活動ですが、ここでは企業のPRのケースを取り上げましょう。
企業は自社のブランドや製品、サービスを世の中の人に知ってもらうために、さまざまな活動を行っています。
PRもその活動の中のひとつであり、 認知を高めるだけではなく消費者とよい関係を保つために、社会の動きを常に観察し消費者の声に耳を傾け、経営側の思いを伝えるなど、さまざまなPR戦略を練っています。
戦略PRとは?
2009年に2冊の本が出版され、これを機に「戦略PR」というワードが、世間で一気に注目されるようになりました。
『脱広告・超PRー広告を信じなくなった消費者を動かす』山田まさる著(インテグレート)
それまでPRといえば、日本ではほぼメディアパブリシティの獲得と同義で語られていました。
メディアパブリシティとは、企業情報や新製品などのニュースリリースの配信や記者会見を行うなどして、情報をメディアに提供し、記事化あるいは番組化するという手法です。
戦略PRの基本は「第三者性」と「カテゴリー訴求」です。
昔、ココアや納豆、寒天などが流行って売り切れるということが起こったのを、覚えている方も多いかと思います。
テレビ番組で、これを食べると健康効果やダイエット効果があるなどと放送されると、翌日スーパーにそれを求めて消費者が殺到するという一連の流れです。
したがって初期の戦略PRは、特に食品業界と相性の良い手法として用いられました。
消費者からすれば、PRは具体的な企業名、商品名、サービス名を出さずに、客観的なファクトをベースにして商品のカテゴリー情報や世の中のトレンド感を出すため、広告と違って信用できるというわけです。
ところが、例えば「ココア」を訴求したとして、業界シェアベスト3は森永製菓、味の素ゼネラルフーヅ(AGF)、片岡物産なので、結果的にはこの3社が売上を伸ばすわけです。
それでは現在においても、こういた手法が一般的なのかというと、必ずしもそうではありません。
2011年3月の東日本大震災をきっかけに、SNSが一気に普及して、誰もが発信者になれるようになりました。(当時のニールセン調査によると、震災の影響でSNS活用が劇的に増加したことを発表、利用者数でいくと、mixiは1321万人(前月比124%)、Twitterは1757万人(前月比137%)、Facebookは766万人(前月比127%)と、大幅に利用者数が急増)
つまり、伝えたい情報に戦略的な演出を施しても、Twitterで検索すれば消費者のリアルな反応が出てきてしまい、広告と同じようにスルーされる傾向が目立つようになってしまったのです。
「渾身のキャンペーンを打ったのに、SNSを見たら全く響いていなくて担当者が青冷める」といった経験は、PR業界でキャリアを重ねていれば、1度は必ず遭遇するあるあるです。
ただし、手法は常に進化するものであり、同じ名前であっても最先端で戦っている企業が10年前と同じ手法をいつまでも取り続けるわけはありません。
広告との違い
さて、認知を高め信頼関係を築くための活動となると、気になるのは広告との違いです。
PRは一見、広告と同じような活動に見えますが、実は決定的な違いがあります。
それはメディア(媒体)にお金を払うかどうかということです。
広告の場合、情報を発信する際には、メディア(新聞、テレビ、雑誌、Webなどの媒体)のスペースを購入する必要があり、 購入したそのスペースの中で広告を展開します。
一方PRは、企業の新しい情報をメディア側が積極的に見つけ、メディア自身がその情報を掲載するか否かを判断していきます。
つまり、情報に話題性があれば、メディアが勝手に拡散してくれるため、情報発信側の企業はメディアのスペースを購入する必要がありません。
広告出稿において、媒体費はコストの中でもとても大きな割合を占めるものですから、PRの方が断然お得に思えますが、そう甘くもありません。
なぜならPRの場合、情報の掲載を決めるのはあくまでメディア側だからです。
つまり、メディアが「これは話題になりそうだ」と判断しない限り、掲載してもらえませんので、消費者に提供したい製品やサービスの情報は、思うようには伝わらないのです。
広告費用を払えば、情報をベストなタイミングで確実に発信できる広告に対し、PRはいつ、どんな形で掲載されるかはわからず、情報提供のコントロールができず、掲載してもらえる保証もありません。
そのかわり、メディアの目にさえ留まれば、媒体費をかけることなく大規模なプロモーションを行うことも可能である一面を持っています。
こうしたことから、製品やサービスのプロモーションに広告かPRかの選択は、時と場合によって適切に使い分けた方が良いということになります。
消費者側から見た違い
ここでもうひとつ、消費者側から見た広告とPRの違いについても解説します。 広告は世の中に向けて企業自身が直接発信するもの。したがって表現は主観的になりがちです。
それに対しPRは、メディアが自身の特性を活かして、独自の表現で発信するため客観的な視点で情報が発信されることになります。
情報をキャッチする消費者にとっては、第三者の客観的な情報の方が、発信者本人の主観的な情報よりも信憑性が高くより魅力的に思えるものです。
つまり、口コミサイトが信頼されやすいのと同じ感覚というわけですから、PRは消費者の心をつかむ効果的な手法であることが理解できます。
情報発信元が発信する情報より、第3者の評価や口コミが信憑性も高まるということです。
情報を発信する本人からの情報より、第3者の評価や口コミの方が信憑性が高まる。
広報との違い
それでは次に、広報とPRの違いについて見てみましょう。
企業におけるPR活動は、主に広報担当者が行っていることもあり、広報とPRを兼ねていることで、同じ意味に使われることも多いようですが、実は少しだけ違いがあります。
まず広報には、その名の通り「広く知らせる(報せる)」という意味があります。
ニュースリリースを配信するなど、情報を発信する活動に対し、PRは情報を伝えることはもちろん、その活動によって
双方向のコミュニケーションを築くことを目的としています。
さらには、その関係性をマネジメントしながら、消費者間でも自然に情報の伝達が行われていくような仕組み
をつくります。
一見同じように見える広報とPR、実は活動の着地点が異なるのです。
PR会社の仕事とは?
企業は製品やサービスの情報を世の中に発信したいと思っていても、以下の理由でPR活動がなかなかうまくいかないことがあります。
- リリース配信を増やすだけのマンパワーが足りない
- PRのテクニックや知識がない
- 方法がわからない
これらの問題解決で頼りになるのがPR会社。製品やサービスに取材の依頼が来るようにさまざまなメディアに向けて働きかけたり、メディアが飛びつく印象的なキーワードや面白い切り口をつくったりするなど、企業のPR活動を支えています。
では、その具体的な内容と流れを見てみましょう。
現状の把握
まずは、製品やサービスをしっかりと把握し、課題・機会を分析、市場の調査を行います。
ここで、「誰に向けてのPRなのか(ターゲット)」そして、「なんのためにPRを行うのか(PRの目的)」を明確にします。
戦術・戦略の立案
製品(商品)やサービス、企業の哲学やブランドについて充分に理解して戦略を立てます。
最適な表現やツールの開発、メディアへの提案など、メディアが動いたその先にある消費者の行動も見越した戦略を立て、細かい戦術まで綿密に練って実践します。
メディアとの深い関係性や、人脈を駆使した戦略的アドバイスにWebの利用など、PR会社によっても手法や強みはさまざまです。
流通網や小売店の販売棚にまで踏み込んでいくとか、時にはクライアント企業のマンパワー補強や社内の広報体制構築まで行うこともあります。
効果検証
PR活動を行ったものの、そのまま放置していては、それ以上前には進めません。
PDCA(Plan/Do/Check/Act)をコンスタントに何度も回し、その都度改善していく必要があります。
クライアントのニーズに合った、よりよい結果へと導くために、効果検証もPR活動の中でとても大切なフローのひとつです。
PR会社の職種
PRの仕事には、大きく分けて2つの職種があります。1つは、クライアントの目的を果たすためにPRの戦略を立てる「PRコンサルタント」です。
戦略を立てるといってもその仕事の幅はとても広く、戦略戦術の立案だけでなく、市場調査からPR効果の検証まで一貫して全て関わります。
プレゼン力、コミュニケーション力はもちろん、各メディアに関する知識や、他社では行っていない戦略を考える発想力に加え、PRの効果検証するうえで必要になるロジカルな思考力も求められます。
そしてもうひとつが、クライアントの情報をTV・新聞・雑誌・WEBなどのメディアで取り上げてもらえるようにメディアにアプローチする「メディアプロモーター」です。メディアの担当者とのやりとりが主な仕事ですが、取材立会いやクライアントとの打ち合わせも多く、日々たくさんの人と関わるため、コミュニケーション能力が問われる職種です。
PR業界の大手企業はどこ?
日本のPR業界の会社は、現在およそ300社前後といわれています。その中でも大手PR会社といわれる会社ベスト5をご紹介します。 《上場5社(売上高公開企業のみ)》
ベクトル
今、最も急成長しているPR会社です。 売上高は473.5億円(2022年2月決算)と公式発表されています。1993年に設立、2012年上場。 山本美月主演、映画「東京PRウーマン」のモデルにもなりました。最近では、投資とPR・IR支援で企業の成長をバックアップする事業やメディカルマーケティング事業をとおして医療分野の貢献を目指しています。
サニーサイドアップ
1985年創業、スポーツ選手のマネジメントビジネスでスタート。売上高は161.9億円(2022年6月決算)。 ベクトルに次ぐ飛躍的な成長で、売上を大きく伸ばしています。
電通パブリックリレーションズ
広告代理店最大手「電通」系列のPR会社。 1961年創業。売上高は93.3億円(2021年度)日本3大PR会社のひとつと言われています。
プラップジャパン
1970年創業。売上高は82.1億(2021年8月決算)日本のPR業界の中でも老舗の会社です。現在は、総合PRコンサルティングのほか、SNSや動画などのデジタル体験コンサルティング、企業の海外進出時のブランディングサポートやインバウンドマーケティングなど、幅広いサービスを提供しています。
共同ピーアール
1964年創業。売上高は56億(2021年12月決算)こちらも老舗の会社です。
広報PR、メディアリレーションズ、危機管理広報を軸に、企業のマーケティング・広報担当者向けに各種セミナーの開催、ツーリズム外国人インフルエンサーによる日本の観光資源の情報発信をする「インバウンドインフルエンサー事業」の展開などが特徴となっています。
売上ランキングの全体は、こちらも合わせて参考にしてください。
⇒《2022年3月最新版》PR会社 売上高ランキング(日本国内から世界の市場まで)
また、2021年のPR会社の世界ランキング(売上2020年)を見てみましょう。
参考文献 「GLOBAL TOP 250 PR FIRMS 2018」/holmesreport ( http://www.holmesreport.com/ )
日本の企業もランクインしています。ベクトルは18位、サニーサイドアップは22位、共同PRは48位、電通PRコンサルティングは50位となっています。
厳しい一面も見えますが、日本の大手PR会社は今後も更なる成長が期待できそうです。
一口にPR会社と言っても、テレビ番組と繋がりの強い会社もあれば、Web媒体に特化した会社もあり、各社の強みはさまざまです。
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