by小野進一
【広告制作会社】の仕事内容、職種、年収、給与、転職事情
たき工房、東京アドデザイナース、アドブレーン…
広告クリエイティブのプロフェッショナル集団である、広告制作会社。
憧れを持つ方々も多く、私たち「プロの転職」にも、広告制作会社への転職を希望される求職者の方がたくさんいらっしゃいます。
そこで今回は、転職先として人気の高い、広告制作会社について大解剖していきます。
広告を作る仕事とは?広告代理店との違いは何か?仕事を受ける経緯や案件への関わり方、気になる収入や働き方まで、一気に紐解いていきたいと思います。
目次
広告制作会社とは?
広告制作会社とは、広告の企画や制作を行って、広告クリエイティブを提供する会社のことで、「広告制作プロダクション」と表現される場合もあります。
ちなみに、一般的に「広告会社」というと、「広告制作プロダクション」ではなく、広告代理店を指す場合が多くなります。
広告制作会社のタイプは、大きくわけて次の2つになります。
・広告代理店系列の会社
ひとつの決まった広告代理店だけからしか仕事を受けない会社
・独立系の会社
複数の広告代理店や事業会社から直接仕事を受ける会社(通称:直クライアント)
広告代理店系列の会社の案件受注について
広告代理店系列の広告制作会社は、特定の広告代理店の広告業務を専属で受注します。
大手広告代理店の場合、自社を専門に広告する代理店を持つことがあります。系列の広告宣伝会社を持つことで、「広告コストを削減できる」「秘密保持を行える」などのメリットがあるためです。
広告代理店系列の広告制作会社は、他の案件を受注することはなく、その広告代理店からの案件だけを受注することになります。
独立系広告制作会社の案件受注について
独立系広告制作会社の案件受注については、大きく次の2つのパターンに分けられます。
広告代理店から依頼
広告代理店からの依頼ですが、依頼窓口によってさらに2つのパターンに分けられます。
・営業からの直接依頼(通称:営直)
・クリエイターからの依頼
広告代理店でクライアントとの窓口になっている営業担当者から直接依頼が来る場合(通称:営直)と、広告代理店で「クリエイター」と呼ばれる「クリエイティブディレクター」や「アートディレクター」から依頼が来る場合があります。
いずれの場合も、広告代理店の社員とチームを組んで制作に携わります。ただし、営直案件の場合は、クリエイティブの責任者として全ての工程を任されることもあります。
広告代理店が企画の大枠を決めたうえで発注される場合が多く、下請けのようなかたちで制作実務を担当することが一般的です。
ただし、広告代理店が獲得したナショナルクライアントなどの大きな案件や、マスメディアと呼ばれる多くの人の目に触れるような案件に関われる場面が多い傾向にあります。
事業会社から直接依頼
媒体を必要としない会社案内や、カタログ、ブランドブックといったインナーツールなどの制作依頼が多くなります。
広告代理店を仲介しない分、クライアントの意向を正確に理解し、きちんとクリエイティブに落とし込める力が必要です。
さらに、ブランディングを踏まえた制作を行うことで、クライアントに深く関わる機会も多くなります。クリエイティブ能力やコミュニケーション能力においては、より高度なレベルが求められます。
企画から携わる依頼もあれば、ある程度構成が決まったデザインやコピーライティングの依頼もあります。
企画から携わる場合は、オリエンテーションから始まり、コンセプトづくり、企画案提案、納品までの制作全般に関わります。そのため、制作期間も長くなり、クライアントとのコミュニケーションもより密になります。
有名な広告制作会社の場合に限りますが、マス広告の制作においては、事業会社からクリエイターの指名があることも。
その場合、媒体は広告代理店が扱いますが、クリエイティブの部分全てを広告制作会社が担当し、広告代理店の営業と連携しながら制作を進めていきます。
広告制作会社の職種
広告制作会社の仕事には、大きく分けてクリエイティブ職と、営業や制作進行を担当するプロデューサー職があります。
主なクリエイティブ系の職種は、下記の通りです。
クリエイティブ職の職種
- クリエイティブディレクター※
- アートディレクター※
- グラフィックデザイナー
- Webデザイナー
- コピーライター
- プランナー
- 映像ディレクター など
※広告制作会社のディレクター職について
広告代理店のクリエイティブディレクターやアートディレクターは、自身の手はあまり動かさず、ディレクション業務に専念することが多いです。
それに対して、広告制作会社のディレクター職では、ディレクションを行いながら、自身がデザインやコピーを作成したり、手を動かしたりすることも多いようです。さらに、仕事を受注するための「営業」の役割を担うこともあります。
制作物のデザインを担当するデザイナーは、作成する媒体によってさらに細分化されます。雑誌、ポスター、パンフレット、DMなどの紙媒体をデザインする人をグラフィックデザイナー、ホームページなどWeb上の媒体をデザインする人をWebデザイナーと呼ぶことが一般的です。
コピーライターは、キャッチコピーなどの文章を作ります。さらに、会社によっては、コピーライターがディレクターを兼ねる場合もあります。
広告制作会社の種類
広告制作会社には、次のような観点からの違いがあります。
専門の得意分野による違い
広告制作会社は、企画や制作などを専門に引き受けています。専門知識やスキルを備えていて、マス広告やダイレクトレスポンス広告、SPツールなど、特定の分野に強みを持っていることが特徴になります。
しかし、マス広告制作からSPツール制作まで、ひとつのブランドのプロモーションをまとめて担当するような会社もあります。
最近では、ブランディングの視点を踏まえた制作を行う会社も増えてきており、デザイナーやコピーライターにもコンセプトづくりのスキルが求められているようです。
さらに、アートディレクター・デザイナーのみが所属するデザイン専門の会社や、クリエイティブディレクター・コピーライターのみが所属するコピーライティング専門の会社もあります。こうした会社は、他社と連携してひとつの案件を担当していくことになります。
会社の規模による違い
広告制作会社は、10人以下で少数精鋭の会社から100人規模の大きな会社まで様々なものがあります。
小規模でも大口の案件を獲得できている会社もあり、会社の規模と案件の大きさ・実績・給与は、必ずしも比例しているわけではありません。
広告制作会社への転職をお考えの方は、会社が抱えている案件とその関わり具合まで、きちんと調べて把握しておくことが大切です。
広告制作会社勤務の年収はどのくらい?
会社によって異なりますが、一般的には広告代理店と比べると収入は高くありません。広告制作会社のどの職種でも「30歳で年収400万円」「35歳で年収500万円」が一つの目安です。
有名な広告制作会社や、プロモーション全体を企画から手掛けているプロダクションでなら、高い収入も期待できます。しかしその分、求められるスキルは高くなり、こうした会社で働くためには、「受賞歴がある」「話題になった広告の制作経験がある」などの実績も必要になります。
なお、企業から直接仕事を受ける制作会社は、納期やクオリティの調整を直接交渉できるため、制作途中で予算が圧迫されることが少なくなり、取り分をきちんと確保しやすいです。
そのため、企業から直接仕事を受ける制作会社の方が、年収は比較的高めの傾向にあります。
広告制作会社に転職するなら
クリエイティブな業務を行う広告制作会社の社員になるためには、適性が重要です。
会社の中での職種によって、求められる適性も変わってきますが、広告制作会社に向いている人は、次のような人になります。
流行に敏感な人
変化のスピードの速い広告業界では、最新のトレンドや情報をいち早くキャッチすることが必要になります。そのため、常にアンテナを高く張っている、流行に敏感な人が向いています。
コミュニケーション能力の高い人
広告を作り上げるためには、さまざまな職種の方と連携して仕事を進める必要があります。コミュニケーション能力が高いとスムーズな意思疎通が可能になり、成果を上げることができるようになります。
創造力がある人
誰も見たことがない、インパクトがあるクリエイティブな作品を生み出すためには、創造力が欠かせません。鋭いひらめきや遊び心を持ち合わせ、伝わりやすく表現できる人が向いています。
良識や常識を持っている人
広告は不特定多数の人の目に留まるものであるので、見る人に不快感や不信感を与えてはいけません。独自のセンスだけではなく、世間一般的な良識や常識を持ち合わせていることも求められます。
広告制作会社に転職するなら
広告制作会社に転職するために、もっとも重要なことは「クリエイティブが好きかどうか」です。その情熱に勝るものはありません。
アイデアを考えることが大好きで、睡眠時間を削ってでも企画案を考えたいと思えるくらいの熱意がある人でなければ、仕事は続かないでしょう。
どの職種にも、資格はとくに必要ありません。ただし、新卒以外の未経験者を募集している会社は少なく、即戦力が求められています。
デザイナーは、IllustratorやPhotoshopなどのソフトが使えることや、基本中の基本と言われる「文字組み」の経験があることが必須条件。
さらに、InDesignや3D関連のソフトが使えたり、イラストが描けたりすると、転職の際に有利な会社もあります。
コピーライターには、キャッチコピーや長い文章を書く能力はもちろんですが、企画力を求められることもあります。いずれにせよ転職の際には、職種を問わず制作の経験が問われます。ポートフォリオ(作品集)をきちんと用意することで対応しましょう。
【参考】ポートフォリオのここでわかる!グラフィックデザイナーのキャリアを決める「デザインの目」
まとめ:広告を作る仕事に興味を持っている方へ
広告制作会社の仕事は、比較的労働時間が長いことも特徴です。その仕事が本当に好きであり、成し遂げたい夢を明確に持っている人でこそ続けられます。
当然のことですが、会社によって担当しているクライアントや案件の関わり方も違います。転職してみたら、「やるこ
とが前職とあまり変わらない」「クリエイティブな仕事に関われない」などということもありがちです。
「どんな仕事を行うのか」「クライアントとどのように関わるのか」。そして、「そこで働くことでどんなスキルが身につくのか」を明確にすることが大切になります。
キャリアに迷ったときは、一度「プロの転職」のコンサルタントにご相談ください。転職前提ではなくても、大歓迎です。キャリアの見直しやスキルの棚卸目的でご相談される方がたくさんいらっしゃいます。
もちろん広告業界に精通したコンサルタントがいますので、ぜひお気軽にお声がけください。
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