地方銀行が金融サービスの枠を超え、地域企業を“人材”で支える動きが加速しています。福島県の東邦銀行は2025年7月、IT人材の育成と紹介を担う新会社「東邦ITヒューマンソリューションズ(TIH)」を設立しました。一方、北海道では北洋銀行の完全子会社、北海道共創パートナーズ(HKP)が2026年春から、インドネシアで採用した人材を建設企業に派遣する事業を始める計画です。地銀グループが相次いで踏み出す「人材インフラ」づくりの最前線を追いました。
地銀が直面する共通課題──「ヒト不足」と「DXの壁」
地方では人口減少と都市圏への人材流出が進み、ITスキルに限らず幅広い分野で人手不足が深刻です。総務省の調査(2023年)によれば、地方企業の約62%が「社内にIT人材がいない」と回答。さらに建設業界では高齢化が進み、熟練技能の継承も課題になっています。こうした現実は、企業のデジタル化や事業拡大にブレーキをかける要因となっていました。
【福島】東邦銀――IT人材を“育てて送り込む”DX伴走支援
東邦銀行は長年培った営業ネットワークを活用し、TIHを通じて次の三つの機能を展開します。
- ITコンサルティング
企業の業務課題を洗い出し、最適なシステム導入や業務フロー改善を提案します。 - 人材育成プログラム
オンライン研修とOJTを組み合わせ、既存社員をDX推進役へ育成します。 - 採用・定着支援
外部から専門人材を紹介し、入社後も定着まで伴走します。
銀行が金銭ではなく「人材」で課題を解決する――この発想の転換が、地方企業のDXを一気に前進させる可能性を秘めています。
【北海道】北洋銀グループ――海外採用から派遣まで“一気通貫”
HKPが始める人材派遣事業は、採用〜日本語教育〜派遣をワンストップで手掛けるのが特徴です。第1弾としてインドネシアで採用した技能実習経験者を選抜し、2026年春、北海道内の建設事業者に派遣します。すでに人材紹介は行っていますが、今年夏にも労働者派遣業の許可を取得し、より柔軟に企業ニーズへ対応できる体制を整えます。
「海外人材の活用は待ったなし。銀行グループとして責任を持ち、教育から職場定着まで支えたい」(HKP幹部)
道内建設業は大型再開発やインフラ更新需要を抱えながら、技能労働者の確保が急務。海外人材が加わることで、工期短縮やコスト抑制への効果が期待されます。

相次ぐ参入が示す“新たな銀行像”
2019年にりそな銀行が職業紹介業へ参入して以降、地方銀行による人材ビジネスは年々拡大しています。東邦銀と北洋銀の事例は、DXとグローバル人材という異なる切り口ながら、「地域企業と人を結び付ける」という共通ミッションを担います。
- 資金供給のみならず
- 人材確保・育成という経営インフラを整え
- 地域経済の持続可能性を高める
この三位一体のアプローチこそ、地銀が描く“未来設計図”の核心といえるでしょう。
地域共創モデルの行方
福島ではTIHが地元IT企業や教育機関と連携し、県外展開も視野に入れています。北海道ではHKPが海外人材の受け入れノウハウを蓄積し、農業や介護といった他業種への横展開を検討しています。地銀発の人材プラットフォームが全国ネットワークへ発展すれば、地方間でノウハウを共有し合う“共創の連鎖”が生まれるかもしれません。
視線の先にあるもの
若者やUターン人材に「地元で働く意義」を再提示し、海外人材を巻き込みながら地域産業をアップデートする――。東邦銀と北洋銀の挑戦は、地方創生の次なるステージを示しています。金融機関が率先して“ヒトの流れ”を設計する時代。今後の成果が、他の地銀や自治体の動きを大きく左右しそうです。
自分のキャリアに迷ったら、<プロの転職>に相談してみませんか?
「次の一歩がわからない」「今の職場で成長できるか不安」「もっと自分に合う仕事を探したい」――そんな思いを抱えたときこそ、転職のプロに頼るタイミングです。
「こんな相談でも大丈夫かな?」という段階から歓迎しています。まずはお軽にご連絡ください。あなたの可能性を一緒に広げるお手伝いをします。
